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グループホーム、介護施設で働く”施設のホーム長”のお話です。

 

弾ける笑顔。実はみな、認知症が発症し、家族だけでは介護が難しくなった人たちだ。

そんなお年寄りがなぜかここでは顔つきが穏やかになる

その影にはひとりの女性の存在がある。

 

グループホームとは認知症のお年寄りが自宅のような雰囲気で共同生活を送る場だ。

かつては徘徊や暴言が目立ち家族だけでは介護がむずかしいとここに来た

認知症を抱えながらも穏やかに暮らせるようサポートするのが仕事

27人の入居者に対して、21人のスタッフが24時間体制でサポートする。

認知症は脳が萎縮し、記憶力や理解力が低下し、コミュニケーションが難しくなっていく。

根本的に治す手立てはまだない

だが1つの拠り所をもってお年寄りと向き合う。

 

「「心は生きている」」

 

認知症で多くのことが失われても、感じる心は残っている。

 

暴れたり、大声をあげたりするのは心の苦しさの現れだと考えられている。

 

「認知症になってだんだん自分のことがわからなくなって

その不安や恐怖というのは、私たちにはわからないぐらいのもの

1番困っているのは本人だから、できなくなったところはちゃんと

支援してさしあげてね、その方が力を精いっぱい発揮して

暮らしを続けられる生き続けられる」ようにするのが務めだ。

 

「飲んでください、飲んでください」

「いや」

ひとりのお年寄りが呼びかけにまったく応じなくなっていた。

食べ物を口にせず、スタッフは困り果てていた。

 

ー担当者から相談を受けるー

心うちを探る時、あることを大切にしている。

「「相手の世界におじゃまする」」

 

お年寄りの傍らに寄り添うように座る。

相手と同じ姿勢をとり、相手の気持ちに自分を近づける

 

声をかけながら、表情やちょっとした動きに気を凝らす。

(わずかに避ける仕草をされた、そこで、)

 

自分が認識できるものだとか、

あまり まわりになくて

非常に何かから逃げてる感じかな

 

と感じ取る。

 

認知症が進み、理解できることが少なくなってしまったため、

自分のなかに逃げ込んでいると判断した。

 

体に触れながら耳元で声をかけ続ける。

「萩尾さん、ちょっと冷たいものを飲もうと思うけど。

萩尾さん、萩尾さん。」

 

ほうっておかないことが大事。

誰かが必ず見てるよ。

繋がっているというか、

すごく絶えず信号を送ってて

 

「萩尾さん、これ」

→そうすると萩尾さんが飲み物を口にした。

そして笑顔が浮かび、グループ長とハイタッチをする萩尾さん。

 

今積極的に行っているのが、お年寄りを地元の人と触れ合わせることだ。

この日は地域の流しそうめん大会に参加した。

 

お年寄りたちには住み慣れた町に住んでいるという安心感をもってもらう。

同時に地域の人には、認知症のお年寄りとふれあい、偏見をなくしてもらいたいと考える。

 

それが、人として尊重されて暮らせる地域とか社会とか、

そんなものができるといい。

 

最近、ある気になるお年寄りがいた。

深夜の徘徊が目立ち、昼夜を問わず家に帰りたいと叫ぶのだ。

 

認知症が進行し、不安が強まっているためだと考えていた。

 

そのお年寄りの徘徊にとことん付き合う

そして歩きながら、言葉に耳をすます。

 

「おうちは誰がいらっしゃるの?お父さん?お母さん?」

「お父さんと男の兄弟だけ。

私のとこは長男を死なせ、次男を死なせ、親父さん死なせてね、

もうほんっとに不安ばっか」

 

このお年寄りは徘徊するとき、いつもふたりの息子の話をし、

夫にも先立たれた話をする。

 

つらい過去が不安の根源にあると感じていた。

 

にがい記憶をできる限り話してもらう

言葉のひとつひとつをある思いをもって受け止める。

 

「「あなたは、とても大切な人」」

 

「保子さんがいないとはじまらないよ」

歩きはじめて30分。

「がんばったね」

「がんばった、がんばった」

保子さん(そのお年寄り)が前向きな言葉を口にしはじめた。

 

他の職員「おかえりなさ~い」

保子さん「おねえちゃんがね、一生懸命してくれた。いい人だ、ありがとね

 

たとえ認知症が進んでも、その心は生きている。

心と正面から向き合えば、穏やかな日々は取り戻せる

それが信念だ。

 

「なんと言っても、お年寄りに向き合ってるときの、

笑顔が印象的なのですが、とても楽しそうに見えますが、

どういうお気持ちなのですか」

 

「その人たちと一緒にいると、その方々たちの世界が見えるような気がして、

その人たちの人間模様というか、人生とかですね、それがぐっと入ってきます。」

 

グループホームというのはどういったとこですか

少人数で家庭的で、お互いができないことを補いながら共同生活をして暮らしていく場

全部してあげるのではなくて、できることを引き出し、できないことをサポートしていく。

 

手帳を見せてもらうと、びっしり予定が詰まっている。

そしてなかには「謝恩会」という文字。これは入居しているお年寄りのお孫さんの

謝恩会に一緒に付き添っていくという。もちろん、全員にできるわけではないが、

なるべくそうできるようにしているといいます。

 

ー働き方についての話へー

「相手の言葉を読み取ったり、共感したり、

無意識のところのコミュニケーション能力というところが(お年寄りに)残っている印象。」

「見逃せないのが、会話じゃない(部分にある)ということ。

声のトーンであったり、表情だったり、それがすごくより伝わってきますね」

「介護をしてる方のなかで、そのへんができない方がいらっしゃると思うのですが、

どういった点に注意して(認知症のお年寄り)と向き合ったらいいですか」

 

「1番困ると思うのが、徘徊や暴言などの行動障害だと思うんです。

認知症の方のそういった行動は、みんな自分の力でなんとかしようとする反応

必死に自分の力を振り絞って(自力で)なんとかしようとする。

その結果起こっているのが、徘徊であったり、暴力であったりする。

たとえば自分で排便なさったものを、綺麗にトイレットペーパーに包んだり、

それをポケットに入れたり。

それをいままでは、触っちゃダメだよ、やめさせなきゃって思ってしまうんだけど、

よーく考えると、始末しなきゃいけないというのは(お年寄り本人も)わかっているんだな。

 

でも認知症の障害があると、(その便を)どうしたらいいかわからない。

だったらそれをどうしたらいいか教えて差し上げればいい

起こっていることを否定するんじゃなくて、見方を変えると、その人がなんとかしようと

一生懸命になっている現れなんだなって見ていくと、実はその起こっていることは、

厄介なことじゃなくて、あ、その人なりの力なんだと思えることもある。」

 

30代のとき、看護職をしていた。

そこで介護を担当することになったのだが、

 

認知症だから、仕方ない

 

そういう思いが頭のなかをよぎったという。

しかし、転機は、北欧デンマークの介護が素晴らしいと聞く。

訪れてみると、

そこではグループホームという形態に出会いお年寄りたちはいきいきとしていた

なぜなら、お年寄りの部屋では、ジャズがかかり、読書をし、

施設に入る以前と同じような生活をそこではできていたからだ。

 

デンマークのその職員は言う。

人はみな、それぞれ人生のリュックサックを背負っています。

その中身を知らなければ、認知症の介護はできません。

「施設に入所する際には、その人生の思い出が詰まったリュックサックを、

いったん肩から下ろし、なかに楽しいこと、苦しいこと、

むかしはこんなだったのよ、こんなことがあってね等、

それをご本人のお話や語りに耳を傾けることによって、

いろんなものを引き出し、共有し、介護ははじまるといいます。

 

そこで気づいた。

認知症になっても人は穏やかに暮らすことができる

自分の仕事はそれをサポートすることだ」

進むべき道がこのとき見えたといいます。

 

 

認知症のお年寄りになると、自分で自分のしたいことがわからなくなるのでは。

 

認知症になるとわからないことが増えていきますから、自分に馴染んだものを探したり

馴染んだ暮らしを求めます。馴染みがあるものだとできることがたくさんあるわけです。

だから、例えば本を読むことはできないかもしれないけど、音楽を楽しんだり、

大好きな時間をつくって、暮らしていけたらいいかなぁと思うんですね。

 

ー家庭で、認知症の介護をしている人たちへー

認知症のひとは、できないことが多くなって、

ほんとにしでかしてしまうような、周りから見たら大変なことを、不可解なことを、

してしまわれて、大変だと思います、周りはね。

だけど、家族を大事に思うこと、それは絶対消えないんですね。

だから人が変わってしまうわけじゃないんです。

(認知症という)病気がそれを見にくくしてしまう

その奥にある、ずっと暮らしてきたご家族の方の姿は変わらない。

そういう姿が奥に眠っているんだよということをお伝えしたいと思います。

 

たしかに辛いけれども、無くなっていないのです。

 

 

「肉体的にも精神的にも純粋にきついんだなっていうのは、表れているところがあって、」

とこの日、一年間働いていたスタッフが辞めたいと言ってきたと、聞いた。

24時間、認知症の老人と接し続ける現場。

やりがいを感じてしまう前に辞めてしまう人もいる。

日々の仕事に加え、スタッフを育てるのが大谷の課題だ。

期待を寄せる若者がいた。転職してきたばかりの新人だ(36歳)。

仕事に真面目に取り組む上に、お年寄りに親切に接することができる。見込みがある。

 

はじめての夜勤にて。

夜の暗闇や静けさは認知症の人の不安を掻き立てる

夜だからこそ、認知症の人ときちんと向き合うことが大事になる。

 

伝えたい事があった。それは、

「「心に向き合うのは、仕事」」

何も、食事をただ準備するとか、

お風呂の準備をしてね、

お風呂の介助をするとか、トイレの介助をするとか、

そのことが仕事じゃなくて、

本当にその人たちの気持ちを理解して

心をかけることが大きな仕事だと思うんです。

 

かつてはパン職人だったという男性。

人の痛みを癒す仕事がしたい

その思いで介護の世界に飛び込んだという。

 

どうすればお年寄りの心と向き合えるのか。

それがわからない。

 

「頭の中混乱しますよね、やっぱ

今までこう、仕事としてやってきた

効率よく段取りよくというのとね

頭の中のイメージと混乱ですよね」

 

あえて細かく指導はしない。

それは、自身が数多くの失敗でお年寄りから学んだ過去があったからだ。

 

本当にその人のことを考えてね

大事に思っているよっていう気持ちがあればね

多少の失敗はね たぶん

許してくださっているだろうと思うでね。

一生懸命みなさんに心をかけようとしたというチャレンジだと、

入居者の方のほうが、彼のことを助けてくれると思う。

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