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「なんでそんなことするの!」もともとあった道徳は人の本能なの?

『 モーガン・フリーマン 時空を超えて』から引用します。

『この世界には良識を歪めるものがたくさんあります。
たとえば他者を否定するような文化のもとで育つと、共感する能力は損なわれます。
人間にもともと備わっている倫理観は非常にもろいものなのです。

脳を鍛えることで内なる悪を押さえ込めると信じる脳科学者がいます。

人は誰しも精神の奥深くに獣を飼っています。
自分が生き残ることしか頭にない獣です。
ほとんどの人は檻のなかで飼いならしていますが、なかには獣の欲望に屈してしまう人もいます。
それがおぞましい結果を招くことも。

しかし邪悪な行動をした人たちに選択の余地はあったのでしょうか。
人間の精神を長年研究した結果、ある恐ろしい結論に行きつきました。
ほんの些細な不運で人は誰しも怪物になるという結論です。

知性や共感の能力、なにを基準にしても人によってばらつきがあります。
この世にひとつとして同じ脳はないのです。
脳はきわめて複雑で繊細な器官です。

怪我や病気で脳内の物質のバランスが崩れると、体の状態や人格まで大きく変化することがあります
もちろん、親指を怪我したくらいで人格は変わりません。
でも脳に親指大のダメージを受ければ、リスクに対する観念や、意思決定が変化し、時には殺人さえ犯します。

1966年、チャールズホイットマンという若者がテキサス大学のタワーに登って銃を乱射しました。
計48人を死傷させました。
事件の恐ろしさを際立たせたのは、犯人の経歴にその凶行を予感させる兆候がなにもなかった点です。
ホイットマンは建築を学び、奥さんや義母と暮らしていました。
原因はいったい何だったのか。
事後、彼は遺書に「自分が死んだら検死解剖してほしい」と書いていました。
解剖すると脳にクルミくらいの腫瘍があり、扁桃体を圧迫していました。
扁桃体は恐怖や攻撃性に関わる領域です。

扁桃体は感情の中心であり原始的な欲求の源です。
セルフコントロール(自制心)の要である、前頭葉と側頭葉によって抑制されています

しかし病気などで前頭葉と側頭葉が弱ると、押さえつけられていた悪魔が顔をだし、
人間を邪悪な行動に駆り出させることがあります。

ある種の認知症など、前頭葉と側頭葉が変化すると抑制が取り除かれ、反社会的な行動を取ることがあります。
衝動が抑えられなくなるのです。

例えば店主の目の前で万引きをしたり、大勢の人の前で裸になったり、性的に問題がある行動を取りやすくなります。
つまり人間の行動は肉体の物理的な状態と密接に関わっているということです。
わたしたちが思っているほど、行動を選択する理由はないのかもしれません。

小児性愛からくる行動で逮捕された男性は逮捕後にひどい頭痛に襲われました。
脳を調べてみると、大きな腫瘍が見つかりました。そこでそれを除去する手術をしたのです。
するとその後の性的な衝動はノーマルなものに戻りました
しかし半年後、再び小児性愛を感じるようになったといいます。
そこで脳を調べてみると、前回の手術ではみつからなかった部分に腫瘍ができており、
その腫瘍を取り除くと彼の性癖は完全にノーマルなものに戻ったそうです。

人間には短期的に満たしたい衝動があり、もういっぽうにそうした衝動を押さえ込む長期的な思考があります。
その両方が常に葛藤を繰り広げているのです。
たとえば目の前の石ころを窓ガラスに投げ入れたい衝動に駆られたとします。
しかしもう一方でそんなことをしたら大変だ、捕まってしまうとも思います。
そのふたつの思いが綱引きをするのです。
その戦いが苦手なひともいます。

自らの衝動や自制心を鍛える脳の訓練があります。
短期的な衝動を抑える長期的な思考力を自らの意思で強く出来るのです。
そこで大事になるのが、扁桃体の活動を抑制する前頭葉と側頭葉の働きを強くすることです。』

ではアルツハイマーといった認知症のように脳の一部や全体が萎縮や機能不全を起こす状態になったらどうすればいいのでしょうか?
人は病気にかかわらず、年齢を重ねることによって脳が萎縮していきます。
どんどんなくなっていくのです。
このように機能を強めるべき部位がなくなっていくとしたら?それが認知症としてあらわれてきたら?

認知症のかたがなぜ感情をあらわに言動するのか
それが本能的欲求を司る扁桃体に対してそれを抑制する前頭葉と側頭葉の働きの低下が関わっているからだとわかっています。

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